物流業務におけるピッキングとは?最適化のポイントも解説

物流業務におけるピッキングとは

ピッキング作業は、物流業務の中でも重要な工程のひとつです。保管棚から商品を正確に取り出すこの作業は、出荷の品質やスピード、コストに直結します。

しかし、現場では誤出荷や作業遅延、人手不足などの課題も多く、改善が求められるケースも少なくありません。

この記事では、ピッキングの基本的な仕組みから主要な方式、現場での課題、そして最適化のためのポイントを解説します。

ピッキングとは?物流現場で何をする作業か?

ピッキングとは、倉庫内の保管棚から注文内容に応じて商品を取り出し、出荷準備を行なう作業のことです。物流の一連の流れ(入庫 → 保管 → ピッキング → 梱包 → 出荷)の中でも、“出荷の質を決める要”と言える工程です。

ピッキングには主に3つの方式があります。

  • シングルピッキング:1件ごとに作業を行なう方式
  • トータルピッキング:複数の注文をまとめて処理する方式
  • マルチピッキング:上記の2つを組み合わせた方式

商品の特性や出荷量に合わせて最適な方式を採用することで、作業の効率性や精度が大きく変わります。その点、ピッキングは、単なる“取り出し作業”ではなく、倉庫全体の生産性を左右する戦略的なプロセスなのです。

主なピッキングの方式とその選び方

では、主なピッキングの方式について、あらためて見ていきましょう。

シングルピッキング

シングルピッキングは、1件ずつ注文内容に沿って商品を取り出す方式です。小口出荷や多品種少量の商品を扱うEC倉庫などに向いています。

作業手順がシンプルで新人教育もしやすい反面、注文数が多い場合は移動距離や時間が増えるという課題もあります。効率化のためには、動線の短縮やレイアウトの工夫が重要です。

トータルピッキング

複数の注文をまとめてピッキングし、その後に仕分けを行なう方式です。大量出荷や同一商品を多く扱うケースに適しており、全体の移動回数を削減できます。

ただし、仕分け工程が追加されるため、正確な数量確認と作業分担の工夫が求められます。

マルチピッキング

複数のオーダーを同時にピッキングし、専用カートや仕分け箱で管理する方式です。シングルとトータルの中間的なハイブリッド型で、作業負荷を分散できるのが特長です。

バーコードやハンディ端末と組み合わせることで、スピードと精度の両立が可能です。

自社の出荷形態・商品構成・拠点数などに応じて方式を選定するポイント
最適なピッキング方式は、業種や取扱商品の性質、倉庫の規模、出荷頻度、作業体制によって異なります。たとえば、アパレルや小物など多品種少量の出荷が多い現場では、柔軟に対応できるシングルピッキングが適しています。

一方で、食品や日用品など同一商品を大量に出荷する現場では、作業効率を重視したトータルピッキングやマルチピッキングのほうが効果的です。

また、1日の出荷件数・SKU数・作業者数などのデータを分析し、自社にとって「どの方式が最も作業生産性を高められるか」を定量的に判断することも重要です。なお、複数拠点での出荷体制を持つ場合、拠点ごとに扱う商材や物量が異なるため、方式を統一せず“ハイブリッド運用”を採用するケースが多いです。

ピッキングでよくある課題

ピッキングでは、次のような課題があります。

移動距離や作業時間が長くなる

倉庫内のレイアウトや動線が最適化されていない場合、作業者が商品の保管棚を何度も往復する必要があり、結果として移動距離と作業時間が大幅に増えてしまいます。特に、ピッキングリストの順番が保管場所と一致していない場合、ムダな動きが発生しやすく、1人あたりの生産性が低下します。

また、出荷量が増える繁忙期にはそのロスが積み重なり、出荷リードタイム全体を圧迫する要因にもなります。倉庫レイアウトの見直しや、頻出商品のゾーニング化、動線分析に基づく最短ルート設計などが、移動効率の改善には不可欠です。

ヒューマンエラー(品番ミス・数量ミス)が起きる

ピッキング作業は、目視確認や手動入力が中心になりやすく、ミスの発生を完全に防ぐのは難しい傾向にあります。品番の取り違えや数量の誤認は、誤出荷や返品対応につながり、顧客満足度の低下とコスト損失を招きます。

特に、SKU(品目数)が多い現場や、似たパッケージの商品を扱う倉庫では注意が必要です。バーコードやQRコードのスキャンによる照合、ハンディ端末によるダブルチェック体制を導入することで、人為的なミスを最小限に抑えられます。

作業の「デジタル化」と「視覚的なわかりやすさ」が、ヒューマンエラー削減の鍵となります。

在庫・ロケーション管理の精度が低い

在庫データと実際の保管状況が一致していないと、作業者が商品を探す時間が増え、ピッキングが遅延する原因になります。また、ロケーション情報が不正確なまま運用を続けると、誤出荷や在庫過不足などの連鎖的なトラブルも起こりやすくなります。

これを防ぐには、ロケーションコード(棚・段・区画など)の体系的な整備と、入出庫時のデータ更新の徹底が重要です。WMS(倉庫管理システム)を導入すれば、在庫の位置情報をリアルタイムに把握でき、作業のスピードと正確性を同時に高めることが可能です。

人材不足や属人化、教育コストが増加する

物流業界では慢性的な人手不足が続いています。これにより、熟練者に依存する属人的な作業体制がボトルネックになっています。

特定のスタッフしか業務を理解していない場合、休暇や退職のたびに現場が混乱し、生産性が落ちてしまいます。また、新人教育にも時間とコストがかかり、安定した品質を保つことも難しくなります。

対策としては、作業手順のマニュアル化、チェックリストの整備、システムを使った作業ガイド機能の導入などが効果的です。誰が作業しても同じ成果を出せる「標準化された現場づくり」が、持続的な人材運用の鍵となります。

ピッキングを最適化する5つのポイント

倉庫レイアウトやロケーション設計を見直す

ピッキング効率を高めるための第一歩は、倉庫内レイアウトの見直しです。

出荷頻度の高い商品(Aランク商品)を出入口や作業エリアの近くに配置し、移動距離を最小限に抑えます。逆に、出荷頻度の低い商品は奥や上段に配置し、動線の混雑を防ぎます。

また、棚番号やゾーンを明確に区分し、作業者が迷わず目的地にたどり着ける環境をつくりましょう。動線分析やヒートマップを活用してボトルネックを特定し、定期的にレイアウトを改善していくことで、倉庫全体の作業スピードを底上げできます。

ピッキングリストや作業指示書をマニュアル化する

ピッキングリストが効率的でなければ、作業者は倉庫内を無駄に歩き回ることになります。保管場所順や動線順に並べ替えたリストを使用することで、作業動線を最短化し、1オーダーあたりの時間を短縮できます。

また、商品の写真やロケーションコードを併記することで、視覚的な誤りも防止可能です。WMS(倉庫管理システム)を活用すれば、リアルタイムでリストを自動生成でき、出荷優先度や担当者別に最適化された作業指示も可能になります。

現場とシステムの連携が、ピッキングリスト最適化の鍵になると言えます。

ロケーション管理を徹底的に整備する

どの商品がどこにあるかを即座に把握できる環境を整えることで、ピッキング作業の効率と精度は向上します。棚・段・区画ごとにロケーションコードを付与し、倉庫全体を「見える化」しましょう。コードの命名ルールを統一し、視認性の高いラベルを貼ることで、誰でも迷わず商品を探せるようになります。

また、ロケーションの登録・更新を入出庫時に確実に行なうことで、データ上の在庫と実物のズレも防止できます。シンプルで一貫性のあるコード体系が、作業スピードと在庫精度の両方を支えます。

システム(WMSやハンディ端末)を導入する

人手による紙のリスト管理には限界があります。WMS(倉庫管理システム)を導入すれば、ピッキング指示をデジタル化し、在庫情報や出荷優先度と連動させましょう。

また、ハンディターミナルやスマートフォンを活用したバーコードスキャンにより、商品間違いや数量ミスを防止できます。データはリアルタイムで反映され、在庫更新も自動化されるため、誤出荷リスクを大幅に削減可能です。

さらに、作業履歴や人ごとのパフォーマンス分析も可能となり、現場改善の根拠データとして活用できます。

人材育成や標準作業をルール化する

ピッキング作業の品質は、人に依存する部分が大きいため、教育と標準化が欠かせません。まずは作業手順をマニュアル化し、誰でも同じ手順で作業できる環境を整えましょう。動画マニュアルや現場トレーニングを活用すれば、新人教育の時間も短縮できます。

また、チェックリストを用いたダブルチェック体制や定期的な品質監査を実施し、ミスを早期に発見する仕組みを構築します。属人化を防ぎ、作業者全員が同じ基準で動ける体制をつくることで、現場の安定稼働と生産性向上を両立できます。

まとめ

ピッキングは物流業務の要であり、出荷精度と効率を左右する重要な工程です。倉庫レイアウトやシステム導入、人材育成などを組み合わせて最適化しましょう。そうすることで、作業ミスが防止され、物流品質の向上を実現することができます。